桜ふたたび 後編
『家にコンピュータはなかった。あなたが隠蔽したのか?』
ローラは大きく頭を振って、目尻を拭いながら答える。
『コンピュータを買えるような余裕はありません。昔、よその子が、いらなくなったPCをくれたのですが、それも押収されたきりです』
『その子どもの名前は?』
『ノア……です』
『ファミリーネームは?』
『知りません。裕福なご家庭の子で、付き合わないように注意していましたから』
『なぜ、裕福だと思った?』
『それは……父親がサンディ・スプリングスの金融関係に勤めていると、言ってましたから。カールは〝ホットドッグのおじさん〞と呼んで、懐いていました』
『その父親は、今どこに?』
『……亡くなったそうです。あの事件のすぐ後に。それから一年ほどして、ノアと母親も──強盗に殺されたと聞きました』
──その〝ご親切なノアの父親〞が、ホットドッグを餌に、カールをハッカーとして育てたか。
盗んだ金が見つからなかったのも、主犯死亡で足跡を辿れなかったのかもしれない。
『今回は誰のマシーンを使った?』
ジェイの質問を、ローラが繰り返す。
どうやら、カールとコミュニケーションできるのは、母親とレオの娘たちだけのようだ。
その彼に、いかなる手段で今回の犯罪を実行させたのか──。