再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
「誰に連絡するんだ? アイツか?」


「アイツって誰? 春香さんよ」


逆に問い返すと、頭を上げた彼に正面から抱きしめられた。

この数時間で慣れてしまった温もりに胸が軋む。


「俺と暮らすと言って。それと沢野井さんのところに伺いたいから、都合の良い日時を確認してほしい」


秘書の頃のような指示に戸惑う。


「訪問って、どうして?」


「長年守ってくださったお礼とお詫びを伝えるのは当然だろ。お前たちは今日からここで暮らすんだ。希和の仕事は……しばらくは仕方ないな」


「ちょっと、待って。そんな急に」


「急じゃない。店に迎えに行ったときから決めていた。悟己の件も知った今はなおさらだ。入籍して引っ越してこないなら、悟己は俺が育てるぞ」


脅しともとれる物言いに、息を呑んだ。


「だって、舘村さんは……」


「あの女は無関係だ。婚約は持ち掛けられたがすでに断っている。お前が聞いた録音は演技だ。当時、舘村家との取引を円滑に進めるためと腹の内を探るために、先方の希望を聞き入れる態度を示す必要があった」


「……騙したのね?」


「人聞きが悪いな、お互い様だよ。ビジネス上、仕方なかった」


飄々と悪びれもせず告げられ、心の奥がズンと重くなる。
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