再縁恋~冷徹御曹司の執愛~

11.「あなただけが欲しかった」

春香さんから助言をもらい、今夜話そうと意気込んでいたけれどできなかった。

取引先とトラブルが発生し、惺さんはしばらく帰りが遅くなるらしい。

迎えに来てくれた渕上さんが申し訳なさそうに車を運転しながら、説明してくれた。


「副社長は必死で調整されていたのですが、申し訳ございません」


「大丈夫です。ずっと無理をしていただいていてこちらのほうが申し訳ないです」


謝罪すると、渕上さんはゆっくりと首を横に振る。

「四年前も……お世話になっておきながら挨拶もせず退職して申し訳ございませんでした」


「事情は副社長からすべて伺っています。上司として不甲斐なく、私のほうこそ謝罪させてください」


真剣な表情で心苦しそうに告げる渕上さんに、慌てて手を振った。


「とんでもないです。渕上さんのご親切には感謝しています」


「今さらですが、副社長が武居さんを選ばれた理由がわかる気がします。あなたがいなくなった際の取り乱しようは衝撃的で今も忘れられません」


そう言って、渕上さんは惺さんのそばで過ごした四年について教えてくれた。

宗太先輩と連絡を取り、頭を下げ、協力を願ったこと、私の両親のもとに幾度となく足を運び、少しでも手がかりを得ようと必死だったと言われた。
< 159 / 200 >

この作品をシェア

pagetop