再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
ああ、もう、なんで。


惺さんは、悪くないのに。


好きな人に捨てられるのが怖くて、向けられる愛を信じられず、逃げ出したのは私なのに。


たくさん傷つけたのに。


どうして惺さんばかりが責任を感じるの?


あふれる愛しさと切なさに胸がヒリヒリと痛む。


「本当に、ふたりとも不器用よね。他人の前ではきちんと気持ちを表現できるのに。本人には言えないなんて、意地を張りすぎよ」


呆れたような声に、涙が滲みそうになるのを必死にこらえた。

職場で、泣くわけにはいかない。


「……春香さん、私、きちんと向き合ってみます」


「そうね。なんなら今から早退しても構わないけど?」


店主の茶化すような声にゆっくり首を横に振る。

さすがにそこまで甘えられないし、公私混同は避けるべきだ。


「いいえ、しっかり働きます。春香さんは十一時から商店街の会合ですよね?」


「さすが元敏腕秘書、頼りにしてるわよ」


優しい店主に思わず頬を緩めた。
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