再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
「以前、嵯峨さんを迎えに来られた秘書の方よね? 私、あの店の女将で……」


説明されて、目の前の女性についてはっきりと思い出す。


「あ、はい……わかります」


早口で自己紹介をしてくれた女性に小さくうなずく。

顔見知りだとわかったせいか、ほんの少し気が緩んだ。


「ごめんなさい、ぶつかってしまって。大丈夫?」


「いえ、私の不注意なので……」


首を横に振るが、些細な動作さえも今は正直つらい。


「あなた、真っ青よ。お店で少し休んでいきなさいな」


店の営業もあるだろうし迷惑ではと断ろうとすると、今日は定休日だからと私を抱えて立たせてくれた。

支えられ、すぐ近くにある店舗ではなく裏側の住居スペースに案内された。


「姉さん、お帰りなさい」


春香(はるか)、ただいま。ソファに多めにクッションを置いてちょうだい」


「あらお客様? ……ずいぶん顔色が悪いわね。大丈夫?」


女将に目元がよく似た、長身の女性が私に問いかける。

きっとふたりは姉妹なのだろう。

明るい茶色のショートカットがよく似合っている。
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