再縁恋～冷徹御曹司の執愛～

「突然、お邪魔してすみません」


「いいのよ。夫は友だちと飲み会で、妹は東京から遊びに来てるだけだし気にしないで」


「遊びじゃないわ。新たな事業の報告と買いつけよ」


「はいはい」


女将はてきぱきと動いて私の世話をしながら、妹の言葉に適当に相槌を打つ。


「武居さん、体が温まるから、まずはこれを飲んで。手足がずいぶん冷えているわ」


「ありがとうございます」


ここに連れてきてもらうまで、私は簡単な自己紹介をしていた。


「紹介するわ、妹の沢野井(さわのい)春香よ。東京で雑貨店を営んでいて、今、ＥＣサイトの開設準備中」


「初めまして、武居希和です」


「武居さんは嵯峨株式会社の副社長秘書よ」


春香さんは女将と五歳離れていて、現在四十歳だという。


「へえ、私もあなたみたいな人材をスカウトしたいわ。秘書経験者の知り合いはいない？」


「春香、突然失礼でしょ。ごめんなさいね、店の従業員が急に退職しちゃって人手不足なのよ。妹は事務作業と簡単な接客、電話応対ができる人を探しているの」


女将の説明に動機が激しくなっていく。


……もしかしたら、千載一遇のチャンスかもしれない。


「あの、私ではだめですか？」


考えるより先に言葉が口をついていた。