再縁恋～冷徹御曹司の執愛～
「え？」


「実は……今、退職を考えていまして……」


会ったばかりの人に軽々しく話す内容ではないとわかっている。

しかも助けてもらって、こんな重い話題はおかしいし、怪しさしかない。

でも気にしている余裕はなかった。


「どうやら訳ありみたいね。詳しい事情を聞いてもいいかしら？」


沢野井さんに真意のつかめない表情で促され、一瞬迷ったがうなずいた。

深呼吸をひとつして、ふたりにありのままの真実を話そうと決めた。

普段は会ったばかりの人にすべてをさらけ出すような真似をしないけれど、今はなりふり構っていられなかったし、この人たちは信頼できると直感的に思った。

自分を取り巻く悪評、惺さんの秘書となってからの日々、もちろん私は恋人同士のつもりだったこと、舘村さんの件も正直に伝えた。

彼の不利になる真似はしたくないが、それ以上に札幌を離れたかった。

ふたりは時折顔を見合わせながらも、真剣に耳を傾けてくれていた。


「……そう、大変だったのね」


話し終えると、沢野井さんが小さくつぶやいた。


「信じてくださるんですか？」


話しておいて確認するのはおかしいが、尋ねずにはいられなかった。
< 73 / 200 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop