飛べない小鳥は見知らぬ運命の愛に震える
 美鷹は琴鳥に「私の番になれ」と言った。「私と」ではなく「私の」。
「手口は同じだ。プレゼントしまくっていい気分にさせ、運命の番だと口説く。口がうまいから、被害者は本当に自分が愛されているのだと思い込む」
 琴鳥は眉根を寄せた。その通りだった。
「黄色っぽいものをプレゼントされなかったか。あいつのマーキングなんだ。鷹の目の色だから」
 確かに黄色のスカートに黄色の石の指輪をもらった。
「1日に2組限定のレストラン。運よく予約がとれたとか君との運命かなとか言う。あいつが経営してるんだから予約がとれて当たり前だ。ハトを出されて共食いだ、なんて笑いをとる。鷹は猛禽類だから肉食なのに。で、ハトは愛のシンボルだとか運命の番だとか言い出す。あいつの鉄板だ」
 琴鳥はがっくりとうなだれた。
「……私も運命の番だと言われました」
「そんなもん、あるわけないだろう。運命なんて恋に酔った2人が口にするうわ言だ」
 それが現実かもしれないが、ひどい言いようだ。琴鳥はうつむく。
「運命の番がとんでもなく性格悪かったらどうするんだ。美鷹に至っては完全に犯罪者だぞ」
 彼の言葉は的確に琴鳥の胸をえぐり、夢をすべてぶち壊してくる。
 一度は本当に美鷹を運命の番だと思った。
 ただただショックだった。
 まだ信じられずにいる。美鷹に騙されていたなんて。
 いや、美鷹は騙してなどいなかったのかもしれない。
 彼女は琴鳥を愛していたのだ。ペットを愛するように。コレクションを愛するように。
 時として、美鷹はオメガと番になったという。
 番になったオメガは番のアルファにしか発情しなくなる。オメガにとっては一生の伴侶だ。
 が、美鷹は飽きれば番を解除してしまう。
 番になれるのはアルファからだけであり、解除ができるのもアルファのみだ。
 アルファは新しい番を作れるが、オメガは番を解除されると次には誰ともつがえず、ただ相手のない発情をして苦しむ。今の医学では癒せない苦痛のあまり、自ら死を選ぶ者がいるほどだ。
 そうして番を解除された1人が、彼の勤める弁護士事務所に助けを求めて来た。
 それから調査を始め、美鷹の悪事を知った。
 あからさまな法律違反はなかった。
 美鷹がハーレムを作っても、それは個人同士が納得していれば自由の範囲内だ。
 金銭的な搾取をしていないから、詐欺などでの犯罪の立件はできなかった。
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