飛べない小鳥は見知らぬ運命の愛に震える
 人権侵害で裁判を起こそうにも、確実な証拠がなかった。他の被害者は洗脳されており、被害の自覚がなかった。
 そうこうするうちに、助けを求めて来たオメガは自ら命を絶った。
 それからも彼は密かに調査を続けた。
 調査にかかる費用は自費で、だから彼はスーツや食費など、自分にかけるお金を削った。
 被害は調べるほどに増えた。
 コレクション外の被害者は金で黙らせられていた。破格の示談金に、被害者は泣き寝入りした。
 オメガにとっても不名誉なそれは、だからいつも表面化しなかった。
 彼はコレクションされた自覚のない被害者に必死に接触し、1人を洗脳から解いて救出した。幸いにも番にはなっていなかった。
 そのことで美鷹は彼の存在を知り、敵対した。
 もう1人を救出しようとしたおり、美鷹が警察を呼んだ。被害者は結局美鷹をかばい、証拠が足りず、警察は美鷹には非がないと判断した。
 むしろ彼が警察から厳重注意を受けた。
 所長は事態を重く見て「オメガ被害者の会」を立ち上げた。
「一方で、やつは「オメガによる被害者の会」を立ち上げた」
 琴鳥は驚いた。あの会の主催者が美鷹だなんて。あんなに琴鳥の心に寄り添ってくれたのに。
「被害者の会なんて口実で、最初のうちは趣味を——あの悪趣味を共有する仲間を探していたようだ。会を通じて知り合った一部のアルファにときどきオメガを貸出していたそうだ。「貸出」の意味は言わなくてもわかるな?」
 琴鳥はうなずく。説明されたくもなかった。
 それに、琴鳥は見て、聞いていた。
 連れ込まれる寸前に見た男。
「オメガによる被害者の会」で見かけた男だった。
 その男と美鷹とのおぞましい会話。
「オメガによる被害者の会は、次第にオメガ狩りを煽る会になった。ネットでの書き込みはひどいもんだ」
 オメガへの正当な鉄槌を!
 煽られた人は実際にオメガへの嫌がらせをしてネットの掲示板に報告したりもしていた。
「「オメガ被害者の会」を開催すると、やつは必ず近くで「オメガによる被害者の会」を開いた。とんでもない嫌がらせだ。同じビルで開催しやがったこともある。オメガに恨みを持つアルファと被害者のオメガが近くに集まることになる。そのせいでよくトラブルが起きた。こっちの被害者の会への参加者は減った。美鷹は間違えて会に行くオメガを捕獲することもあった。君はいわば、罠にかかった獲物だ」
「そんな」
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