飛べない小鳥は見知らぬ運命の愛に震える
被害者の会に行く人は、つまりは心に傷を負った人だ。それをさらに食い物にするなんて。琴鳥の想像外の悪辣さだった。
琴鳥は悔しく自省する。もっと早くに気づくべきだったのだ。オメガによる被害者の会の、まさにその会場に美鷹はいたのだから。
知らず、自身を抱く腕に爪を立てていた。ぎり、と食い込んで痛みが走った。
「俺はまた美鷹がやらかすとふんで、見張っていた。そこへ君とあいつが現れた」
彼は被害者の会のボランティアとともに交代で琴鳥と美鷹を見張った。彼女がホテルの部屋に連れ込まれたのを見た彼は、パラリーガルの万希と協力者とともに部屋に乗り込んだのだ。
「事情はだいたい説明できたな。それで君に頼みがある」
「なんでしょう」
「あいつを訴えるのに協力してほしい」
琴鳥は息をのんだ。
「君のケースは運よく刑事事件にできた。おかげで過去の事件に対しても捜査が始まった。だが、警察は確実に立件できるものしか送検しない。まだ泣いている人がいる。その人たちの救いになりたいんだ。民事で君が勝訴すれば、判例ができる。続く人たちが有利になる」
琴鳥は戸惑う。裁判なんて考えたこともなかった。
「断ってくれていい。金銭的にも精神的にも負担が大きい上に、マスコミは君を被害者のアイコンのように扱うかもしれない。それによって傷付くこともあるだろう」
琴鳥はテレビのニュースを思い出す。大きな裁判などで被害者が記者会見を行い、フラッシュが何度もたかれている様子を。
あの立場に自分がなるのかもしれないと思うとぞっとした。
「返事は急がない。よく考えてくれ」
「……はい」
会話はそこで途切れた。
ハトはあいかわらず餌を探して歩き回っている。何も考えていないような姿に、羨ましさすら感じる。
「聞いてもいいか。君は被害者の会に参加しようとしていたんだよな? どんな被害を受けたんだ? 嫌なら言わなくていい」
迷ったのち、琴鳥は話した。通り魔のように水をかけられたこと。それで外出が怖くなったことを。
「みなさんの被害に比べたら私なんて軽くて……。参加しなくて、かえって良かったかも」
自嘲の笑みを浮かべると、彼は顔をしかめた。
琴鳥は悔しく自省する。もっと早くに気づくべきだったのだ。オメガによる被害者の会の、まさにその会場に美鷹はいたのだから。
知らず、自身を抱く腕に爪を立てていた。ぎり、と食い込んで痛みが走った。
「俺はまた美鷹がやらかすとふんで、見張っていた。そこへ君とあいつが現れた」
彼は被害者の会のボランティアとともに交代で琴鳥と美鷹を見張った。彼女がホテルの部屋に連れ込まれたのを見た彼は、パラリーガルの万希と協力者とともに部屋に乗り込んだのだ。
「事情はだいたい説明できたな。それで君に頼みがある」
「なんでしょう」
「あいつを訴えるのに協力してほしい」
琴鳥は息をのんだ。
「君のケースは運よく刑事事件にできた。おかげで過去の事件に対しても捜査が始まった。だが、警察は確実に立件できるものしか送検しない。まだ泣いている人がいる。その人たちの救いになりたいんだ。民事で君が勝訴すれば、判例ができる。続く人たちが有利になる」
琴鳥は戸惑う。裁判なんて考えたこともなかった。
「断ってくれていい。金銭的にも精神的にも負担が大きい上に、マスコミは君を被害者のアイコンのように扱うかもしれない。それによって傷付くこともあるだろう」
琴鳥はテレビのニュースを思い出す。大きな裁判などで被害者が記者会見を行い、フラッシュが何度もたかれている様子を。
あの立場に自分がなるのかもしれないと思うとぞっとした。
「返事は急がない。よく考えてくれ」
「……はい」
会話はそこで途切れた。
ハトはあいかわらず餌を探して歩き回っている。何も考えていないような姿に、羨ましさすら感じる。
「聞いてもいいか。君は被害者の会に参加しようとしていたんだよな? どんな被害を受けたんだ? 嫌なら言わなくていい」
迷ったのち、琴鳥は話した。通り魔のように水をかけられたこと。それで外出が怖くなったことを。
「みなさんの被害に比べたら私なんて軽くて……。参加しなくて、かえって良かったかも」
自嘲の笑みを浮かべると、彼は顔をしかめた。