ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける

18.はじめて魔法が成功した日はもしかして

“ここで何か見つかるといいんだけど”

 なんて思いながら到着した薬草畑。

「メルヴィ! これ、これ……っ」
「あぁ、それは隣国から取り寄せた、すり潰して飲めば利尿作用に効くやつだよ」
「そしてこっちは」
「花の蜜を集めれば下痢止めになるね」
「あそこにあるのって」
「煎じて塗れば痔に効くね」
「……もしかしてお腹が弱いの?」
「俺じゃないけど!? リリがそういうページばかり見てたんだけど!」
「えー」

“全然記憶にないわね”

 焦ったように断言するメルヴィを見ながら乾いた返事をする。
 ここまで記憶がないのだから、やっぱりメルヴィ側の記憶が私のかけた魔法のせいで上書きされたか、他の魔女との記憶とすり替えられたのだろうと少し俯いた。


「――?」

 そして思った以上に沈んだ気持ちになったと気付いた私は、そっと自身の胸に手を当てる。
 私の魔法のせいだと繰り返し続けたのは私のくせに、やはりどこか本当に好かれていたいと思っていたのだと改めて気付かされて。

“いつか魔法を成功させたいって思っていたのに、こんなに失敗していて欲しいと思ってるなんて皮肉すぎるわ”
< 137 / 231 >

この作品をシェア

pagetop