ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 痛みなのに、嬉しくて。

 つける側の嬉しいの?
 つけられたらメルヴィも嬉しいの?

 気になって気になって堪らない。
 この抗えない興味は、私が魔女だからなのか、それとも彼を好きだからなのかはわからないけれど。


「リリが、したいなら」

 上半身を起こしベッドに座ったメルヴィが私も起こす。
 膝立ちで彼に寄り掛かった私の目の前に差し出された彼の首筋めがけ、私はカプリと嚙みついた。


 メルヴィがしたことを思い出しつつ吸ってみるが、何故か上手く痕がつかなくて。

「あ、あら? こうだと思ったのに」
「もう少し口を窄めないとつかないかも」
「こ、こう?」

 ちゅうちゅうと吸ったり噛んだりしても痕がつく気配がなく、段々と焦ってしまう。
 そんな私の様子にふっと小さく笑ったメルヴィが、今度は私の胸の上部に吸い付いた。

「んっ」

 ピリッとした小さい痛みが走った部分を見下ろすと、どこかいたずらっ子のような笑顔のメルヴィと赤い鬱血痕が花開いていて。

「もっかい見せるね。ほら、こう」
「待っ……ひん!」

 先ほどつけた痕のすぐ下に吸い付かれる。
 
“だめ、これ以上下がったら”
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