新人洗濯係がのぞいた秘め事~王太子の秘密を暴いた先にあるのは溺愛か死か~
 王太子妃は元男爵令嬢だったと聞いた。
 それでも王太子とは身分の差があるという。
 ということは、周りに相談できる人などいないのではないだろうか。
「あれ、君は」
 ふいに声を掛けられ、心臓が口から飛び出そうになった。

「驚かせた? ごめん」
 柔らかな声がリエーヌに謝罪する。
「ユリック様……」
 驚きと喜びで、心臓が飛び跳ねた。

「やっぱりまた会えたね。ずっと君のことが気になっていたんだ」
 うれしそうに彼は微笑む。
 リエーヌはそれだけで幸せな気持ちになってしまう。

「なにか深刻そうな顔をしていたけど、何かあった?」
 優しく言われ、リエーヌはうつむいた。
 言って良いものだろうか。ただ彼女が勝手に心配しているにすぎないことを。

 木陰を見ると、もう王太子妃はいなくなっていた。
「話すだけ話してみて。1人では解決しないことも、2人だったらなんとかできるかもしれないよ?」
 リエーヌは不安をこらえて彼を見た。
 微笑が彼女を包む。

 リエーヌは考える。彼は貴族だから自分と違ってたくさん本を読んでいるはずだし、いろんなことを知っていて頭も良いはずだ。
「実は」
 意を決して、リエーヌは話す。
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