新人洗濯係がのぞいた秘め事~王太子の秘密を暴いた先にあるのは溺愛か死か~
 王太子の部屋のシーツが血のようなもので汚れていたこと。王太子妃が痛そうに腕をさすっていたこと。その姿が暴力を受けていた近所のご夫人に重なったこと。
「私の勘違いだとは思うんですけど、気になって……」

 違うよ、と笑って否定してほしかった。君の杞憂だよ、王太子夫婦はとても仲が良いんだ。
 そんな返事が来ると思っていた、のに。
 彼は眉を寄せ、真剣に考え込んでしまった。

「ユリック様……」
 不安になって声をかけると、彼はハッと顔をあげた。
「君は優しいんだね」
 目があって、恥ずかしくなってリエーヌは顔を伏せた。

「そんなことがあったなら君が心配するのもわかるよ」
 寄り添う言葉に、胸はときめく。

「一緒に調査に行こう」
 予想外の言葉に、息をのんだ。

「私は王太子殿下とも親しくてね。彼がそんなことをするとは思えないんだ」
 リエーヌは頷く。今まで王太子の悪い噂など聞いたことがなかった。
 だが、暴力を受けていた女性の夫もまた、世間の評判はとても良かった。

「彼がもし本当にそんなことをしているのなら、止めなくてはならない。止めるのもまた友人であり臣下である私の役目なのだと思う」
 いつもと違う真剣な彼の顔に、思わずみとれそうになる。
< 14 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop