新人洗濯係がのぞいた秘め事~王太子の秘密を暴いた先にあるのは溺愛か死か~
 この衣装、きっと貴族だ。
 貴族にぶつかったなんて、どんなに怒られるか。
 リエーヌは慌てて祈るように膝をついて両手を組み、彼に向き直った。

「申し訳ありません。お許しください」
「謝ることはないよ。君は何も悪いことをしていない。さあ、立って」

 手を引っ張られ、彼のもう片方の手で背を支えられるようにして、リエーヌは立った。
「洗濯物かな。落ちてしまった……けど、今拾ったらセーフってことにならないかな?」
 彼はいたずらっぽく笑う。

 リエーヌはただただ見とれた。
「注意がおろそかになっていたようだけど、何か心配ごとでもあった?」
 どきっとした。
 王子の汚れたシーツのことが思い出された。

「何してるの!」
 叱責の声がとんできた。
 召使の女性の声だった。
「こんなに散らかして! ——ユリック様!」
 召使の女性は慌てて頭を下げた。

「彼女は悪くないよ。私がぶつかってしまったんだ。この洗濯物、どうしよう?」
「洗いに出しますので、ご安心ください」
 リエーヌはがっかりした。せっかく洗ったのに。
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