溶けたラムネ入りの炭酸ジュースは、美味しくない。
大学は自由席。

授業が始まり、なんとなく流れのまま隣の席に座ってしまったことにより、ルーズリーフ1枚をつかって、話しかけてくる。

『名前聞いてもいいですか?』

『普通名乗るのが先だろ。聞くなら』

『佐々木胡桃(ささき くるみ)です。
先輩は?何歳ですか?』


名前はもういいのかよ
『松坂弘大(まつざかこうた)23歳、留年生だ』

『先輩だ、私は、いくつに見えますか?』

いくつに見えるったって、お酒飲んで介護されてたんだから、20…ていうか、初めてお酒のんだって言ってたから、20歳なったばかりなのか?

20歳を超えてもそれまで飲んでなかったなんてことが他にあるか?

『20歳じゃないのか?』

『そう!20歳』
「なんですけどね、…」

その濁し方はなんだ。訳ありか?

佐々木胡桃の一言が少し気になったところで、授業は終わった。

みんな続々と帰る中、僕たちは、ゆっくりとノート等の筆記用具片付け、「先輩、次空きですか」
佐々木胡桃は問いかけた。

「空いてるけど、課題終わってなくて。佐々木が、それやりながらでも良いなら」

「あ、胡桃って呼んでくださいよ。あんまり好きじゃないんです名字
えーっと、じゃあ、お勉強会だ!!得意分野なら手伝いますよ」
そういいながらまとめた荷物を持って教室を出る。

「いや、いいよ。僕の立場はどうなるんだよ」

「どうって、留年生ですよね?」

「佐々木「先輩、胡桃って呼んでください!それ以外聞きませんから!」

「…胡桃は、空きなのかよ」

「あ、名前!呼んでくれた。ふふん、空きですよー!」


そう言いながら後ろを振り返り微笑む胡桃は、無邪気な子供みたいにはしゃいでいるように見えた。


ここまでは。


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