コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「で、俺 説教されてんの?」

その日の午後、啓介は洸にミーティングルームに呼び出されていた。

「あんなのただのおふざけじゃん。口にしたわけでもないし。」
啓介の言葉に洸は溜息を()いた。

「お前なぁ…仕事中にしょーもない事するなよ。水惟が怒ってないから説教で済んでるけど、今のご時世、相手によっては訴えられても文句言えねーぞ。」

「水惟だからチューしたんだよ。」
「は?」

「ヒドイよなー水惟も洸さんも、水惟がバツイチだって教えてくれないんだもんなー。」
啓介は拗ねたような口調で言った。

「プライベートなことだからな。水惟が入社した時にいたメンバーには話さなきゃいけない状況だったけど、水惟より後に入社したメンバーには言ってない。」
「それ」
「え?」

「水惟と深山さんの離婚てなんかワケありっぽいよね。入社した時に話さなきゃなんない状況って何?」
啓介が興味津々という表情で聞いた。

「個人情報。」

「そうやって隠すから、急にバツイチだって言われて可愛く見えちゃうんじゃん。」
「おい!」

「もう仕事中には手ぇ出さないから安心してよ。でもプライベートはプライベートだから、口出さないでよ。」

全く悪びれない啓介の態度に洸は呆れとあきらめの溜息を()いた。

「お前のそういう妙に勘と観察眼が鋭いところが才能なんだろうな、ムカつくけど。プライベートには口出さないけどな、水惟を傷つけるようなことと、仕事に支障が出るようなことしたらクビだからな。」

「はーい。すみませんでしたー」
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