コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—

水惟の酒癖

「でもさ、ってことは水惟が深端に戻ってくるの?」
話を聞いていた芽衣子がワインを飲みながら言った。

「んー…」
水惟はどちらともつかない表情(かお)をする。

「迷ってるっていうか…急な話でまだよくわからないっていうか…」

深端(うち)って新卒の倍率すごいんでしょ?私はコネみたいな中途採用だからよくわかんないんだけど。」
芽衣子が冴子に聞いた。

「すごいわよ。とくにデザイン系の部署は花形だしね。」

「ふーん、やっぱりそうなんだ。じゃあ戻ってきた方が良いんじゃない?せっかく頑張って入ったんでしょ?」

「うーん…」
水惟は困った顔をした。

「でもさ、あの頃一緒に働いてたけど、水惟が深端にいたって結構意外なんだよね。」
芽衣子は今度は塩漬けのオリーブをピンに刺しながら言った。

「だって水惟ってガツガツしたタイプじゃないじゃない?大手の広告代理店でバリバリ働くぞー!って感じで就活してるところが想像できないなーって。はじめから生川さんのとこみたいなデザイン事務所に行きそうな感じ。」
「それもそうね。」
冴子も同意した。

「でも入社してるってことは、深端の最先端な環境で仕事したかったってこと?」
「うーん…それもなんか、よくわからなくて…頑張って作品集(ポートフォリオ)作って就活したのは覚えてるんだけど…」

(就活中の私…どんなだっけ?)
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