冷徹御曹司かと思っていたら溺愛御曹司でした〜甘い束縛にとらわれて
見上げる顔はほんのり色づき、切れ長の鋭い目を優しくして見つめていた。
(あー、尊い)
「砂羽…」
「…はい。西園寺さん」
霧矢の低音ボイスで名を呼ばれて、粟立つ肌。
「霧矢と呼んで」
「霧矢さん」
「可愛い。俺の名を呼ぶこの可愛い唇にキスしたい。いいか?」
「キスしたいです」
砂羽の小柄な体を抱き上げた霧矢は、砂羽の怪我した膝を気遣いつつ膝の上に横座りで彼女を乗せた。
腕の中に囲うよう抱きしめ、砂羽の顎を指で摘み上げさせた霧矢は、砂羽の唇に触れた。
初めは、ただ触れるキス。そして、お互いに見つめ、物足りなさそうにして砂羽の唇を親指の指先で撫でる霧矢。
そんな霧矢に煽られた砂羽は、男の真似をして、男の唇を指先で撫でる。
砂羽のその指先にキスする霧矢。
数時間前には、お互い誤解から絶望していたはずが、誤解が解けると一気に甘い時間に、照れ臭い。
「なんだか夢見てるみたい」
それは霧矢も同じようで、照れ笑いしている。
「砂羽をこうして抱きしめれる日が来るなんて
夢のようだ」
「霧矢さん」
抱きつく砂羽に、霧矢は忍耐力を試されているようだった。
「砂羽、足が治ったら、…一緒に走ろう」
「はい、楽しみです」