冷徹御曹司かと思っていたら溺愛御曹司でした〜甘い束縛にとらわれて

砂羽は、手にあるりんごと男が走っていった方向を交互に見つめてから、いつものコースに戻ったのだ。

『今日は会えた』

そう、心の中で密かに喜ぶ砂羽。
今年の春から、休日の朝は、体力作りと美意識の為走り出した砂羽だったが、すれ違う際、挨拶を交わしたことがない男性がいた。

背が高く、体にフィットしたランニングウェアからわかる筋肉質で引き締まった体。そして、整った顔立ちの中にある切れ長の鋭い眼光をもつ男に会いたいが為に、今は走っているようなものだ。

一人住まいの1LDKに戻った砂羽は、汗を流す為にバスルームへ。

シャワーを頭から浴びて、悶えるのだ。

(あー、今日も尊いご尊体だったわ。)

盛り上がった胸筋に、割れた腹筋、そして、キュッと引き締まってエクボがあるだろうお尻。

凛々しい表情で、地面を蹴り上げる足は、しなやかな動きでドーベルマンのように駆け抜けていく。

いわゆる、砂羽好みの細マッチョなのだ。
そして、顔もタイプとくる。

男が独身だとしても何か行動を起こすつもりもなく、憧れの存在で、ただ会えるだけで嬉しい。

自分の持ったイメージを壊したくないから、挨拶程度もできない。

いわゆる、恋愛には臆病になっているのだ。
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