冷徹御曹司かと思っていたら溺愛御曹司でした〜甘い束縛にとらわれて
そうなってしまったのも理由があるのだが、今は、尊いご尊体を持つ男を密かに鑑賞することだけが楽しみな残念な女である。
初めて聞いた男の声は、重低音で威圧する事に慣れた声だった。
見た目の年齢と身についている物の高そうな事からみて、何か役職ある地位についているのだろうと伺える。
(あの耳障りのいい低音ボイスで…)
想像するだけで、ゾクゾクしてくる砂羽は、きっとある種にだけマゾになるのだろう。
浴室での不埒な想像を経て、身も心もスッキリとした砂羽は、おばあさんにもらったりんごを男のようにかじった。
「うーん。美味しい」
ジュワッとりんごの甘ずっぱさが口いっぱいに広がる。
骨太で長い指先、りんごを鷲掴んだ大きな手、程よい厚みのある唇を大きく開けて、りんごにかぶりついていた男をまた思い出す。
そして、また不埒な想像に思考が傾きかけた時、砂羽のスマホが鳴る。
「はーい、おはよう」
『そっちは朝から元気だな。走ってきたのか?』
「うん、ランニングハイになってる」
眼福ある尊い男に会えた理由もあるが、走った後の爽快感と幸福感で、テンションは高くなっていた。
『…そうか』
呆れたような声を出す電話の主に、この気持ちはわからないらしい。