片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして
 誠は悲しい、傷付いたという表情を隠そうともしなかった。仕事上はあまり弱味を見せない彼なのに。やはり勘違いされている旨を話したくとも部長の目もあり、言葉が出ない。

「僕の部下へ頼み事は勝手にしないでくれるかな? するなら上司である僕に一言貰える?」

「ぶ、部長! 朝霧くんにはプライベートでお願いされたので」

「だとしても、だ。町田を困らせるのは止めてくれ。君には万全なメンタルで業務にあたって欲しいからな」

「私は困っているという訳ではーー」

 語尾が曖昧に潰れ、どう伝えればいいのだろう。迷う。
 気付けば私と部長は距離を取りもしないで、交際していると誤解される位置で顔を見合わせた。

 改めて部長は部長で整った顔立ちをしている。

「ん? 僕の顔に何かついている?」

「いえ」

「別に僕は朝霧の妄言を本当にするのもやぶさかじゃないよ。デートはキャンセルして僕と過ごそう。季節限定のパフェが美味しそうな店を見付けたんだ。町田、パフェ好きでしょ?」

 にっこり微笑む部長はまるで誠へ当て付けるみたい。ただし本気で誘われていると感じない。
 でも誠からしたら、仲の良さをアピールされたと受け取り兼ねない。
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