しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~
(どうしたらいいんだろう……)
何が正解なのか衣都には、もう分からなかった。
どうにかなると、根拠のない自信を持っていたのが、滑稽に感じられる。
しつこく結婚の許しを訴えられること自体が、綾子を不快にさせたのかもしれない。
衣都はただ知ってもらいたかった。
たとえ自分の恋が実らずとも、響の幸せを誰よりも願っていたこと。
奇跡的に両想いになれた今は、彼を自分の手で幸せにしたいと思い始めていること。
……けれど、ひとりよがりだと思われたらそれまでだ。
どうあがなえば、許してもらえるのだろうか?
衣都はピアノの蓋を開け、スツールに座った。
偉大な作曲家の多くは、大いなる葛藤や苦悩の中で作曲活動を続けてきた。
今なら彼らの気持ちがよくわかる。
衣都は鍵盤に指を置き、心のままに音を奏でた。
無力な自分に対する歯痒さや怒りを振り払うように、気が済むまでピアノに没頭していく。