しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~
「響さん!」
「話は後だ。衣都を助けに行く」
あとを追いかけてきた律と一緒に、土蔵まで走り抜ける。
息を切らしながらたどり着いた土蔵には、外側から閂がしてあった。
埃が拭われた跡は新しく、つい最近開けられたことを意味していた。
響は閂を抜き取り、祈るような思いで扉を開いた。
そして、真っ先に目に飛び込んできた光景に唖然とした。
衣都は土蔵の中にあった木箱を積み重ね、その上によじ登っていたのだ。
「衣都!何をしているんだ!」
「響さん……?」
自分の身を顧みない危険な行為に思わず声を荒らげた。……これが失敗だった。
「きゃっ!」
集中力を切らした衣都が体勢を崩し、ガラクタごと崩れ落ちたのだ。
「衣都!」
響はガラクタを掻き分け、衣都を必死で掘り起こした。木箱はいくつか壊れ中身が割れていたが、今は衣都の無事を確認するのが先だ。
「大丈夫かい!?」
「ええ……」
衣都に目立った外傷はなく、響は心の底から安堵した。
しかし次の瞬間、衣都の顔が苦痛に満ちた表情に変わった。
「いたっ……」
「どこが痛い?」
「み、右足が……」
落ちた拍子に足を捻ったのか、衣都は痛そうに右足をさすった。これから大事なピアノ演奏を控えているというのに、まさかの出来事だった。
「医者を探してきます!」
律はすぐさま旧四季杜邸の母屋に走って行った。