しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~
「衣都ちゃん~。お疲れ様~!とっても素敵な演奏だったわ〜」
発表会が終わり、来場者のお見送りをしていた衣都に話しかけたのは、来賓席に座っていた綾子だった。
しかし、その隣に響の姿はない。
「おば様、響さんは?」
「あら、響も来ていたの~?全然気づかなかったわ~。客席には誰も残っていなかったし、先に帰ったんじゃないかしら~」
「そう、ですか……」
見に来てくれたお礼が言いたかったのに、もう帰ってしまったのだろうか。
衣都が意気消沈していると、ひとりの女性が綾子との会話に割って入ってきた。
「初めまして、尾鷹紬と申します」
女性は凛とした声で高らかに名乗った。
鎖骨まで伸びた美しい黒髪と、自信に満ち溢れた誇らしげな瞳が印象的だ。
綾子が彼女のことを、すかさず説明していく。