しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~

 ◇
 
「ふう……」
 
 ドレスを脱ぎ、私服のワンピースに着替え終えた衣都は大きく息を吐いた。
 生徒が全員帰った後、片づけを終えると、ようやく講師陣も帰宅の途に着くことが出来る。

「お疲れ様でした」
「お疲れ様~」

 バックヤードの扉から外に出ると、互いに挨拶を交わしながら、ひとりまたひとりとその場から立ち去っていく。

(ひと仕事終わった~!)

 衣都は歩きながらすっかり日が暮れた空に向かって、大きく伸びをした。
 発表会は当然、講師にとっても大仕事だ。
 十一月の冷たい風に吹かれながら達成感を噛み締めていたその時、ふっと誰かが近づいてくる気配がした。
 後ろを振り返った衣都は目を見張った。
 
「衣都、お疲れ」
「響さん!先に帰ったんじゃ……」
「頑張った衣都にご褒美をあげようと思ってね。こっそり待っていたんだ」

 響は衣都に見えるように、手に下げていた紙袋を掲げてみせた。

「ご褒美って、まさか……」
「そのまさかだよ」

 響は優美に微笑んでみせた。

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