しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~
三者三様の反応が出揃い、話についていけない衣都は途方に暮れた。
「驚かせてごめんね、衣都。実は四季杜家には、ある『しきたり』があるんだ」
響はようやくこの状況を説明する気になったらしい。
「しきたり、ですか?」
四季杜家で長い間居候生活を送っていた衣都だったが、しきたりの存在については初耳だった。
「四季杜家の男子は『初めて』身体を重ねた女性と結婚しなければならない」
「……え?」
しきたりの内容を聞いた衣都は目を見開いた。
結婚という不穏な単語はさておき……。
(は、初めて……?)
頭の中がいくつもの疑問符で埋めつくされていく。
昨日、衣都は目の前にいる響とベッドで過ごした。
衣都も他の人と比べることはできないが、初めてとは思えないほどコトはスムーズに進んだ。
「響さん……『初めて』だったんですか?」
「そうだよ?」
響は特段恥じるでもなく、いけしゃあしゃあと言い放った。