しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~
「ということで、あとのことはそちらで片付けてくださいね?行くよ、衣都」
「え!?あの!響さん!?」
響に腕を引かれて立ち上がった衣都は、戸惑う秋雪と綾子を残し、リビングルームを後にした。
響に引きずられるようにして、長い廊下をバタバタと忙しなく歩いていく。
(なにがどうなっているの!?)
衣都は未だに混乱の渦の中心で、右往左往していた。
訳が分からないまま屋敷の外に連れて行かれ、響の車の助手席に押し込められる。
車はすぐに出発し、四季杜家から徐々に離れていった。
「衣都には今日から僕のマンションで暮らしてもらう。離れて暮らしていると結婚の準備も大変だしね」
「あ、あの……」
「荷物はあとで取りに行こう」
「えっ……あ……。はい……」
矢継ぎ早に今後の予定を決められ、とりつく島もなかった。
衣都は唇を引き結び、黙って耐えるしかなかった。
(一体、響さんは何を考えているの……!?)
響の横顔からは真意を読み解くことはできなかった。