しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~
「これからどうするつもりだ?」
「どうするって……」
「考えようによっては、とんでもなくラッキーだぞ。しきたりのおかげで、雲の上の存在だった初恋相手と結婚できるんだ。悪い話じゃないだろ?」
棚ぼたをもっと喜べという律の台詞を聞いて、衣都は膝の上に置いた手を握りしめた。
「四季杜のおじ様とおば様になんて言えばいいの……」
結婚すると告げた時、二人とも心底驚き……失望していた。
まとまりかけていた縁談をぶち壊すなんて、恩を仇で返すような仕打ちだ。
「響さんはありとあらゆる美女の誘いを蹴って、『初めて』にお前を選んだんだぞ?」
衣都は、うっと呻いた。
なぜ他の女性を差し置いて、自分が選ばれたのか。
衣都には皆目見当がつかない。
「覚悟を決めといた方がいい。響さんはお前をみすみす逃がすつもりはないだろうからな」
響の右腕として同じ会社で働く律は、衣都よりもよっぽど彼の人柄を理解していた。