しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~

(これからどうなるのかしら……)

 四季杜家のしきたりがどれほどの効力を持つのか、衣都は知らない。
 しきたりを盾に結婚を主張する響に対し、秋雪と綾子がどんな行動に出るのか。
 そして、衣都はどう振舞うべきなのか……。

(考えたってどうしようもないわ)

 判決を待つ被告人のように、粛々と沙汰を待つしかない。
 白紙の未来のことよりも、ひとまず今は荷ほどきを済ませてしまいたい。
 衣都は気を取り直し、持ってきた荷物をしまおうとクローゼットを開けた。

「……え?」

 衣都はクローゼットの前で棒立ちになった。
 空っぽだと思いこんでいたが、扉の中には所狭しと新品の服やバッグが並べられていた。

(まさか……!)

 衣都は響がいるリビングに真っ直ぐ駆け込んだ。

「響さん!クローゼットの中に女性物の服がたくさんっ……!」
「ああ。全部、衣都のだよ。好きな服を着てもらって構わない」

 ソファでくつろいでいた響はこともなげにそう言うと、優雅な仕草でコーヒーを口に運んだ。

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