しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~
(頑張らなきゃ……!)
かつてないほどのプレッシャーを感じてはいたものの、衣都にはこれまで培った忍耐力と舞台度胸がある。
もとより、響と離れずに済むならば、どんな課題にも全力で取り組むつもりでいた。
「結婚式場も押さえておきますか?」
「そうだな。秋頃を目処に調整してくれ」
「招待客用のホテルも必要ですね」
響と秋雪は早速、梅見の会の招待客や、結婚式の日取りや場所について話し合い始めた。
着々と進んでいく響との結婚話。
置いていかれないように必死で耳を傾けていた衣都だったが、ふとこの場に綾子がいないことが気にかかった。
「あの……おじ様、おば様は今日はどちらに?」
「綾子はあの日以来、私室に閉じこもっているよ。響のお嫁さんは自分が見つけるんだと、随分と張り切っていたから、その反動が大きかったようだ。梅見の会にも出ないと言い張っている。子供のように拗ねているんだよ。困ったものだね」
綾子の様子を聞いた衣都の顔色が、瞬時に変わる。
いつも明るく潑剌としている綾子が、私室に閉じこもっているなんてただ事ではない。
「あの……おば様のお部屋までご挨拶に伺っても?」
「ああ、構わないよ」