君の隣で歌いたい。
私はすごすごと戻ってくる沢里の二の腕をがしりと掴み、高い位置にあるその顔を思い切り見上げた。
「沢里! お願い、力を貸して。私息もれを治したい!」
「うおっ」
「特訓に付き合ってください!」
「……俺でいいんだな? だってずっと顔見て歌うんだぞ?」
「首が痛いのくらい我慢する!」
「そうじゃなくてさあー……ああもう。もちろん協力するよ」
「ありがとう!」とその両手を勢いよく掴むとまた沢里はぶつぶつとなにか言い始めた。
上手く聞き取れずに耳を寄せようとすると逃げられてしまう。
息もれを治す道が見えた。私はそのことにひたすら安堵する。
これから沢里と言われたように特訓をし、一曲歌いきれるようになりたい。いや、必ずなる。
心の中で決意していると、視界の端にまた一人スタジオに入ってくるのが見えた。
「ちょっと、二人とも! テラスで待ってるって言ったでしょう?」
ゆるいパーマがよく似合う小柄な女性だ。よく通る声が沢里親子に向けられたと思ったら、彼女は私を見つけて目を輝かせ始める。