夫婦ごっこ
「何これ小学生の作文? いろいろすっ飛んでるんだけど……好きになるまでの過程はまあいいとして、好きになってから告白の間は?」
「間?」
「よく話すようになってとか、友達になってとか、告白までの過程があるでしょ?」
「あー、話はしてなかったですね。好きだなって思ってすぐに『好きです』って告白したんです。そしたら秒で『ごめんなさい』って言われましたけど」

 あまりにも自分と違いすぎて、奈央はもう何も反応できなかった。ゆめがここまで恋愛方面にアグレッシブだとは思わなかった。告白なんてそう簡単にできるものじゃはいはずだ。学生ならまだしも大人になったらいろいろなことにとらわれて躊躇するのが普通だろう。それを好きになってすぐに告白するとは随分と肝が据わっている。奈央はもう驚きを通り越して一人感心していた。その間も久美とゆめの会話は進んでいく。

「いや、それは言われるでしょうよ。いきなり知らない人から告白されたら怖いって」
「でも、お互い会釈くらいはしてましたよ?」
「一応、認識されてはいたわけね」
「それにその人いつも本読んでるから、話しかけはしなかったんです。邪魔しちゃ悪いじゃないですか。でも、カウンター席で隣になったときも全然嫌そうじゃなかったし、脈あるかなって思ってたんですけどねー」
「はあ、その自信は尊敬するわ」

 本当にすごい自信だ。奈央には逆立ちしても真似できそうにない。もう驚きポイントが多すぎて、いろいろとツッコミたくなるが、それにツッコんでいては話が先に進まなさそうだ。何しろまだ三回の告白のうちの最初の告白場面までしか聞いていないのだ。とりあえずは一通り聞いてみようと奈央はゆめに話の続きを促した。
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