夫婦ごっこ
「ねぇ、ゆめちゃんが話しかけてる間、その人はどうしてるの? 十分間は帰らないんでしょ?」
「席に座ってじっとしてますね。無視されてるって感じではないんですけど、特に反応もしないというか」
ゆめの言葉に少しの違和感を抱いた。会話している相手が何の反応も示さなければ、それは無視されていると感じるはずだ。ゆめの言葉は矛盾している気がする。もしもそれが成立する状況があるとすれば、それは相手の反応を必要としていない会話になっているんじゃないだろうか。ゆめは少し猪突猛進なところがあるから、そのお相手に対しても一方的にガンガン話しかけているのかもしれない。
「ゆめちゃんさ、話ってどういうふうにしてる? 一方的にただ自分のこと話してたりしない? 相手に何か質問したりとか、向こうの言葉を引きだすような会話してる?」
「え? 質問?」
「自分のこと知ってもらうにしても、一方的に話されるだけだと会話はしづらいんじゃない? 全然知らない同士なんだから」
「それは……確かに」
「カフェの常連なんだったら、好きなメニューの話をするとかさ、共通の話題はあるでしょ? そういう普通の話はした?」
「……してないです。自分のこと知ってもらおうと思って、自分の話ばかりしてました」
「自分を知ってもらうって、たぶんプロフィールをただ話すのとは違うと思うよ? 人となりを知ってもらわないと。だから、まずは自然な会話から入っていくほうがいいんじゃないかな?」
「うーん、確かに。西条さんの言う通りですね。よし、やってみます! 私、今度は普通の会話をしてみます! ありがとうございます、西条さん!」
ゆめは奈央の手を握ってブンブンと振りながら感謝を伝えてくる。ゆめにはこういう素直なところがあるから本当にかわいいと思う。今のアドバイスだけで上手くいくかどうかはわからないが、少しでもいい方向へ進展してくれたら嬉しい。
でも、奈央はゆめを応援する一方で、自分のことを情けなく思っていた。偉そうにアドバイスしていたが、ここ最近奈央はちゃんと義昭と会話できていた自信がない。できるだけ普通に話をしようと心がけているが、自分の中に防衛意識があるから、義昭の話をしっかりと受け止められている自信がないのだ。上辺だけの会話になってしまっている気がする。
そう考えると本当に自分が情けなくて、思わず大きなため息が出そうになった。会社の飲み会であることも忘れて激しく落ち込んでしまいそうになる。けれど、そういうところを表に出さない努力ばかり重ねてきたから、久美にもゆめにも悟られることなく、奈央はすぐに表情を引き締めていつもの自分を装った。
「席に座ってじっとしてますね。無視されてるって感じではないんですけど、特に反応もしないというか」
ゆめの言葉に少しの違和感を抱いた。会話している相手が何の反応も示さなければ、それは無視されていると感じるはずだ。ゆめの言葉は矛盾している気がする。もしもそれが成立する状況があるとすれば、それは相手の反応を必要としていない会話になっているんじゃないだろうか。ゆめは少し猪突猛進なところがあるから、そのお相手に対しても一方的にガンガン話しかけているのかもしれない。
「ゆめちゃんさ、話ってどういうふうにしてる? 一方的にただ自分のこと話してたりしない? 相手に何か質問したりとか、向こうの言葉を引きだすような会話してる?」
「え? 質問?」
「自分のこと知ってもらうにしても、一方的に話されるだけだと会話はしづらいんじゃない? 全然知らない同士なんだから」
「それは……確かに」
「カフェの常連なんだったら、好きなメニューの話をするとかさ、共通の話題はあるでしょ? そういう普通の話はした?」
「……してないです。自分のこと知ってもらおうと思って、自分の話ばかりしてました」
「自分を知ってもらうって、たぶんプロフィールをただ話すのとは違うと思うよ? 人となりを知ってもらわないと。だから、まずは自然な会話から入っていくほうがいいんじゃないかな?」
「うーん、確かに。西条さんの言う通りですね。よし、やってみます! 私、今度は普通の会話をしてみます! ありがとうございます、西条さん!」
ゆめは奈央の手を握ってブンブンと振りながら感謝を伝えてくる。ゆめにはこういう素直なところがあるから本当にかわいいと思う。今のアドバイスだけで上手くいくかどうかはわからないが、少しでもいい方向へ進展してくれたら嬉しい。
でも、奈央はゆめを応援する一方で、自分のことを情けなく思っていた。偉そうにアドバイスしていたが、ここ最近奈央はちゃんと義昭と会話できていた自信がない。できるだけ普通に話をしようと心がけているが、自分の中に防衛意識があるから、義昭の話をしっかりと受け止められている自信がないのだ。上辺だけの会話になってしまっている気がする。
そう考えると本当に自分が情けなくて、思わず大きなため息が出そうになった。会社の飲み会であることも忘れて激しく落ち込んでしまいそうになる。けれど、そういうところを表に出さない努力ばかり重ねてきたから、久美にもゆめにも悟られることなく、奈央はすぐに表情を引き締めていつもの自分を装った。