夫婦ごっこ
 義昭は約束通り一晩中奈央を抱きしめてくれていたようで、翌朝目が覚めても奈央はまだ義昭に包み込まれたままだった。

「奈央さん、おはよう」
「あ……おはようございます」

 あまりに近い距離に恥ずかしくなってくる。でも、それと同時に昨日のことが思いだされて、少し胸が苦しくなった。昨日に比べれば随分とマシなのだが、奈央が思わず胸に手を当てて眉をひそめてしまったから、義昭が心配の声をかけてきた。

「まだ苦しいね。今日は何か楽しいことでもしようか」
「楽しいこと?」
「うん。デートしようか。嫌なこと全部吹き飛ぶくらい思いっきり楽しもう。どこにでも付き合うから」


 義昭は本当にその日一日奈央の気分転換に付き合ってくれた。

 初デート以来のゲームセンターに行けば、今日は好きなだけ散財すればいいと言ってくれて、二人でUFOキャッチャーに夢中になった。昼食を取ったあとは初めて二人でカラオケに行き、声が枯れるほどに歌いまくった。そして、最後は温泉施設に行って、体をしっかりと癒してから家に帰った。眠るときにはまた義昭のベッドに誘われて、前の日と同じように抱きしめられながら眠った。
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