氷の女と呼ばれた私が、クソガキ御曹司に身も心も溶かされるまで。
『で、あなた、ウチの息子の誘いを断って帰ってきたんですか。』と、電話の向こうで阿良々木が言った。
「当然でしょう。12歳の子供と一晩何をして過ごせと言うんです。それに、私の子供嫌いは阿良々木も御存知のはずですが。」と、私は言い返した。
22時、私は自宅マンションに帰宅するや、阿良々木に抗議の電話を掛けた。
しかし、阿良々木はそんな私の抗議をスルーし『それで、どうでした、ウチの息子は。なかなか良い男だったでしょう。』などと抜かすので、私は正直に答えた。
「クソガキでした。」
ただし、5年後は分からないと思った。
12歳であれだけの器量だ。
いずれ、あの少年はとんでもない大物に化ける気がしないでもない。
が、現時点ではただのクソガキだ。
先程のレストランでの出来事は、思い出すだけで頭が痛いがー…。
「しかし、そんなことはもうどうでもいいのです、阿良々木。」と、私は言った。
今はもっと頭の痛い光景が目の前に広がっていた。
感情を『恨み』から『怒り』に切り替え、低い声で阿良々木に問う。
「一体、これはどういうことですか。」
約14時間前は何の異常もなかった私の部屋が、ものの見事にすっからかんになっていた。
家具も家電も、とにかく全て無くなっている。
あるのは、ガランと寒々しい空間だけ。