氷の女と呼ばれた私が、クソガキ御曹司に身も心も溶かされるまで。
『引き払いました。』
「…引き払いました?」
『ええ、あなたがいない間に、そのマンションを引き払いました。あなたの僅かな私物は、会社の倉庫に預けてあります。』
「………。」
住人の許可なくそんなことが出来るのかと思ったが、世界有数の財閥のトップに君臨する男に不可能などないのだろう。
そもそもこのマンションに住んでいるのは私だが、持ち主は阿良々木である。
日本に滞在している間だけ、私が住まわせてもらっているのだ。
住居だけではない。
カードも、スマホも、今、私が履いている下着さえも、阿良々木に与えられたものだ。
阿良々木の『所有物』である私は、彼に私生活の全てを握られている。
『あなたの僅かな私物は、会社の倉庫に預けてあります。』と言われても、厳密には私の物など無いに等しい。