氷の女と呼ばれた私が、クソガキ御曹司に身も心も溶かされるまで。
「ところで、坊ちゃん。」
「お、俺のことはシドって呼んでほしいんだぜ!」
「ところで、シド。あなた、先程から何を隠してるんですか。」
その瞬間、シドの表情が分かりやすく強張った。
「べ、別に何でもないんだぜ。」
「早速恋人に隠し事ですか。そんな風に嘘をつかれると、私はあなたと上手くやっていけるか不安になります。」
冷ややかな声音で恋人を問い詰めると、シドは観念したように後ろに隠していた物を私の前に出した。
コンパクトサイズのジェラルミンケースだった。
シドがケースの指紋認証を解除し、中身を取り出す。
余程貴重な物が保管されているのかと思いきや、出てきたのはモンスターのイラストが描かれたカードだった。
「お、俺の秘蔵のポキャモンカードコレクション…星羅が見せてほしいって言ったから…。」
「………。」
「で、でも、こんな子供の趣味はもう卒業するんだぜっ!」
そういきなり宣言したシドに、首を傾げる。
「何故、卒業するのですか。」
「こんなの子供の遊びなんだぜ!俺みたいなワルは、夜な夜な賭けポーカーに繰り出す方が似合ってるんだぜ!それに俺は興味のない話で、星羅を退屈させたくないんだぜ!」
「確かにポキャモンカードに興味はありません。しかし、あなたの好きな物には興味があります。」
「え?」
「恋人のあなたが好きな物を、私も好きになれるよう努力します。そのポキャモンカードについて、詳しく教えて頂けませんか。」
途端に良くも悪くも単純な子供の瞳が、眩しいほどに輝きだす。