氷の女と呼ばれた私が、クソガキ御曹司に身も心も溶かされるまで。
「ホ、ホントに?ホントに星羅もポキャモンカードを好きになってくれるんだぜ?」
「まぁ、あくまで努力するだけなので、本当に好きになれるかどうかはシドのプレゼン次第ですが。」
「任せるんだぜ!世界でトップクラスのカードプレイヤーであるこの俺が、星羅にポキャモンカードの魅力を手取り足取り教えてあげるんだぜ!」
無邪気にはしゃぐシドの姿を見て、ホッとした。
咄嗟に利かせた機転にしては、上出来だった。
私が側にいるのに、夜な夜な賭けポーカーなんぞに繰り出されてたまるか。
『あなたのせいで、息子が不良になってしまいました。』などと阿良々木からクレームをつけられたら、後で高額のシッター代をふんだくる計画がパァになってしまう。
そんな大人の汚い思惑など露知らず、シドがせっせとカードを準備しながら言った。
「俺の趣味を分かってくれる星羅は、やっぱり最高の女なんだぜっ!」
「ありがとうございます。」
「俺も星羅の好きなものを知りたいんだぜっ!」
「私に好きなものなどありません。」
「えっ。」
「あっ。」
仮にも恋人の前で、今のは失言だった。
適当に言い繕おうとすると、先にシドに言った。
「だ、だったら、俺が星羅の『好き』になれるよう頑張るんだぜっ!」
「………。」
「星羅?」
「あなた、意外と女心をくすぐるのがお上手ですね。」
「え?」
「何でもありません。…それで、このカードはどのようにして遊ぶものなのですか。」
「まずは遊ぶ前に、このカードの美麗イラストをじっくり堪能するんだぜっ!」
言いながら、シドがベッドに寝転んだので、私もそれに倣った。
2人並んで俯せ状態になり、顔を寄せ合ってカードが収納されたファイルを覗き込む。
傍目には、仲の良いカップルにしか見えない構図だ。
あるいは、子供の寝かしつけに手こずっている母親。