氷の女と呼ばれた私が、クソガキ御曹司に身も心も溶かされるまで。
シドが深夜とは思えぬテンションで、ポキャモンカードの魅力を熱く語る。
しかし、その話は想像以上に私の興味をそそらなかった。
カードを見るのにも飽きたので、一生懸命喋るシドの横顔をジッと眺めることにする。
12歳らしからぬ端整な横顔。
この角度から見れば、睫毛の長さがよく分かる。
触れていないのに伝わってくる体温の高さは、子供特有のものだ。
シドが興奮状態なのも相まって、尚更熱く感じる。
…しかし、眠い。
「それで、このカードは俺が世界大会で優勝した時にもらったものなんだぜっ!…星羅、ちゃんと聞いてる?」
「聞いてます、聞いてます。」
「やれやれ、困った生徒なんだぜ。俺の話を真面目に聞かないと、世界一のポキャモンカード博士になれないんだぜ?」
「………。」
一体、いつ誰がどこで何時何分何秒地球が何回まわった時、そんなものになりたいと言った?
勝手な目標を立てられてげんなりする私の顔を、シドが覗き込む。
「…星羅、もしかして眠い?」
「…ん。」
こっくりこっくりと舟を漕ぎ出す。
おかしい。何だ、この妙な眠気は。
普段の私は、96時間くらいなら眠らなくても平気なはずなのに。
未だかつて感じたことのない猛烈な眠気に、違和感を覚える。
しばらくして、原因に気付いた。
この子供のせいだ。
この子供の心地良い体温が、私を眠りの世界に引きずりこもうとするのだ。
あれだ。こたつと同じだ。
人の心と体の緊張を解きほぐし、圧倒的な安心感を与える温かさ。