氷の女と呼ばれた私が、クソガキ御曹司に身も心も溶かされるまで。
そうして眠りに落ちる寸前、フワリと柔らかいものが私の体を包み込んだ。
シーツだった。
シルクの優しい肌触りに、一気に意識を持っていかれそうになる。
しかし、今にも閉じてしまいそうな私の目が、部屋からコソコソと出て行くシドの後ろ姿を捉えた。
「…待ちなさい。どこに行くのですか、シド。」
振り返ったシドは、枕を抱えていた。
「今日のポキャモンカード講座はここまでなんだぜ。星羅、ゆっくり眠るといいんだぜ。」
「…あなたは一緒に寝ないのですか。」
すると、シドが気障な仕草で髪を掻き上げ「フッ、男は狼なんだぜ。同じ部屋で寝て、星羅が朝まで無事でいられる保証はないんだぜ。…俺はあっちの部屋のソファで寝るから、寝室は星羅が使っていいんだぜ。」
「………。」
紳士だ。しかし、童貞のくせに生意気な。
私は眠気を振り払い、ベッドから上体を起こして言った。
「心配しなくても、あなたは狼ではなくペンギンにしか見えません。何なら、抱き締めて寝てもいいくらいです。」
「えっ。」
「私は気にしませんので、あなたもここで寝たらいいでしょう。」
「せ、星羅は無警戒すぎるんだぜっ。もっと男を警戒するべきなんだぜっ。」
「なら、シドがベッドを使って下さい。私がソファで寝ます。」
部屋の主(あるじ)、それもまだ年端もいかない子供を差し置いて、私がベッドを独占するわけにはいかなかった。
ベッドを下り、別室に向かおうとする私を、シドが引き止める。
「女性をソファで寝かせるわけにはいかないんだぜっ。」
「問題ありません。慣れています。」
「でも…。」
「本当に大丈夫ですから。」
そういえば、まだバスローブのままだったことに、ふと気付いた。
着替えるのも面倒だし、もうこのままでいいか。
そう思った時だった。
「や、やっぱりそんなの駄目なんだぜっ!!」
後ろから追いかけてきたシドが、よりにもよって私のバスローブの腰紐をしっかりと掴んだのは。