氷の女と呼ばれた私が、クソガキ御曹司に身も心も溶かされるまで。
「それで、このデッキは俺がポキャモンカードヨーロッパカップの初代チャンピオンに輝いた時に使用したものなんだぜっ!」
「…はぁ、そうなんですか。シドはすごいですね。」
「フッ、ポキャモンカード界のドラゴン使いとは俺のことなんだぜっ!」
「…はぁ、そうなんですか。シドはさすがですね。」
「それから、こっちのサイン入りカードは…。」
自慢のカードコレクションをベッドの上に広げ、とにかく必死に喋りまくる。
そうしないと、緊張で心臓がどうにかなってしまいそうだった。
星羅さんとベッドの上で2人きり。
それだけでもありえないのに、現在の彼女は俺の『恋人』という設定だ。
まさか、駄目元で言ったことがOKされると思わなくて、驚きのあまり引っくり返ってしまうところだった。
それから、俺の心拍数はずっと異常なペースを維持したまま。
例え期間限定の疑似体験という形でも、彼女を一目見た時から憧れ続けたポジションにいるのだから仕方ない。
一晩の間にあまりに多くのことが起こり過ぎ、幸せを感じる余裕もないまま、がむしゃらにポキャモンカードの説明を続ける。
が、俺がこんなにも一生懸命喋っているのに、星羅さんがジッと見ているのは何故かカードじゃなくて俺の方。
で、出来れば今は俺じゃなくて、カードの方を見てほしいんだぜ。
じゃないと、俺の心臓がもう持ちそうにないんだぜ。
意を決して、彼女の方を振り向く。