氷の女と呼ばれた私が、クソガキ御曹司に身も心も溶かされるまで。




大胆に開いたバスローブから見える白い肌。

そして、胸部の中心を深々と穿つ複数の銃創。

それは、かつて彼女が凶悪な鉛弾をその胸で受け止めたことを意味していた。

銃創を中心に広がる切開手術のあとが、まるで彼女の肌に入った亀裂の様で痛々しい。

3発の弾痕は全て心臓に近い位置にある。

ああ、今、自分は奇跡を目の当たりにしているのだと、改めて思った。

被弾した位置がほんの数ミリでも違っていれば、彼女は間違いなく『あの瞬間』に即死し、ここに存在していないのだから。

このあまり多くを語らない女(ひと)がひっそりと胸に抱える傷を、恐ろしいとは思わない。

ただ、その痛々しさに顔を背けずにはいられなかった。

星羅さんは俺の不自然な反応に気付いたろうか。

…いや、大丈夫そうだ。

彼女は初心な男の子をからかうのに夢中で、俺の顔が強張っている本当の理由に気付いていない。

その時、星羅さんの声のトーンが変わった。

俺の度胸を試すような口ぶりで「私が本気だと言ったら、どうします。私が身も心もあなたに捧げると言ったら、あなたは私の事を受け入れてくれますか。」

「もちろんなんだぜっ!!俺はどんな星羅でも受け入れる覚悟があるんだぜっ!!」と、俺は即答した。

その驚異の回答スピードに星羅さんは目を丸くしていたが、俺にしてみれば即答できて当然のサービス問題みたいなものだった。

何なら『星羅、今すぐ俺の胸に飛び込んでくるといいんだぜっ!!』と付け加えても良かったがー…しかし、その後のことを俺はあまりよく覚えていない。

どうやら俺は動揺していたせいで、知らず知らずの内に失言を連発しまくっていたらしい。

次の瞬間、さながら隕石の如く衝撃が俺の頭に落ちてきてー…次に目を開けた時にはすっかり朝で、俺は温かいベッドの中で星羅さんの抱き枕になっていた。




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