氷の女と呼ばれた私が、クソガキ御曹司に身も心も溶かされるまで。
恨みつらみがこもった歯ぎしりと共に、物騒な寝言を続ける。
「忌々しい…あのクソ親子…揃いも揃って…よくも、私、を…いつか、必ず…鉄槌、を…。」
「………。」
今しがた彼女の寝言に登場した『クソ親子』とは、恐らく俺とあららぎけーいちのことではない。
あららぎけーいちと9番目の息子のことを指しているのだろうと、すぐに察しがついた。
かつて星羅さんと婚約関係あった9番目の息子は、今は彼女と深い因縁の間柄にある。
普段の星羅さんは胸の傷のことなどすっかり忘れたような顔をしながら、心はまだ『あの瞬間』に囚われているのだと、今の寝言で確信した。
再び彼女の胸元に視線を戻す。
意外とだらしない星羅さんが着用するバスローブは、腰紐があろうがなかろうがどのみち大胆にはだける運命にあるようだ。
今も剥き出しになっている傷痕から、今度は目を背けない。
俺の中にいる『宗像シド』が、彼女への気持ちを一層強くする。
俺は『あの男』とは違うんだぜ。
どんな星羅でも受け入れる覚悟が、俺にはあるんだぜ。
星羅を捨てたろくでもない『あの男』の事なんか、俺がすぐに忘れさせてやるんだぜっ。