氷の女と呼ばれた私が、クソガキ御曹司に身も心も溶かされるまで。
ろくでもない夢を見ていた。
とにかくろくでもない男達しか出てこない、最低最悪の夢だった。
これはさぞかし寝覚めが悪かろうと思いきや、夢の途中で何故かペンギンの子供が出てきて流れが変わった。
そのペンギンは人懐っこくサービス精神旺盛で、私の方にトコトコと歩み寄ってくると、滑らかな毛を存分に触らせてくれた。
触り心地が良いだけでなく、石鹸の良い匂いまでする。
おかげで、私は悪夢から救われたような気持ちで朝を迎えることが出来た。
が。
「星羅っ、おはようなんだぜっ!!」
「………。」
目覚めた瞬間、子供特有の甲高い声に鼓膜をやられる。
横になったまま視線だけをスライドさせると、シドがベッドの脇に立っていた。
「…おはようございます。」と覇気の無い声を返し、時計を見る。
6時。
記念すべきニート生活1日目くらいはぐうたらしたかった私は、げんなりと溜息を吐いた。
シドもまだ寝巻姿だが、彼の背後にはきちんとした身なりの初老男性が立っている。
昨夜からまるで専属の執事の様に振る舞う、このホテルの支配人だ。
「星羅、朝食を持ってきたんだぜっ!」
言いながら、シドがベッドを上って隣にやってきたので、私も渋々体を起こす。
そうして横並びになると、支配人がベッドテーブルのセッティングを始めた。
目の前に朝食というより3時のおやつみたいなメニューが並ぶ。
パンケーキ、オレンジジュース、フルーツの盛り合わせ、アイス、アイス、アイス…。
その豊富なトッピングに12歳のシドは大喜びだが、28歳の私は普通に白米と漬物が食べたい。