別れが訪れるその日まで【番外編】
な、何これ何これ何これーっ!?
するとパニックになる私の耳元で、紫苑君が甘い声でささやく。

「ごめん……芹さんの気持ちに、全然気づいてなかった……。嫌な気持ちにさせて、これじゃあ彼氏失格だよ……」
「ふえ? そ、そんなことないから! 悪いのは私、私だから!」
「違うよ……。奈沙さんが入ってるって、忘れてたわけじゃないんだけど、あんまりボタがなついてくるもんだからつい浮かれてた。実は黙っていたけど……僕、今でも猫が凄く好きなんだ!」

いきなりのカミングアウト……でもごめん、それ知ってた!
猫になつかれたら、そりゃあテンション上がって可愛がりたくもなるよね。
その辺はさすがに分かってるよー!

だけど心の中でツッコミつつも、耳に触れる吐息がくすぐったくて、ドキドキが止まらない。
すると、紫苑君はさらに続ける。

「だけど、一番は大事なのは芹さんだから……好きだよ、芹さん。大好き」
「──んんっ!?」

ハッキリと告げられた『大好き』に、ドクンと心臓が跳ね上がる。

回された手で強く抱き締められて、逆に私は全身の力が抜けて倒れそう。
し、紫苑君、こんな大胆なこと言うんだ。
いつもとは違う態度に、ドキドキが止まらなくなる。
 
私はお姉ちゃんやボタに嫉妬しちゃうような面倒くさい女の子なのに、そんな私を大好きって言ってくれる彼のことが、私だって大好きでたまらないよ!

「わ、私も好き……です。ね、ねえ。私は自分でも思っていた以上にヤキモチ妬きなんだけど、紫苑君は本当に、それでもいいの?」
「もちろん、だってそれを含めて、芹さんなんだもの。だいたい、もし僕が『よくない』って答えてたら、芹さんは別れようって言ってたの?」
「や、ヤダ! そんなの絶対にイヤ!」

ああ、自分で聞いておいて、何言ってるんだろう。
私ってば言ってることが滅茶苦茶だよ!

だけど紫苑君は呆れる様子もなく、「良かった」と言って抱き締める力をさらに強くする。

はわわっ! なんかもう、幸せ過ぎて意識が飛びそうだよー!

お姉ちゃんを紹介するっていう当初の予定からは大きく外れちゃってるけど、い、いいよね?

そして、そのお姉ちゃんはというと。

『ふふ、二人ともラブラブだー。ねーボター』
「ニャ~」

離れた所からボタと一緒に私たちを見ながら、ニマニマ笑っている。
きっと今夜あたり、このことをイジられるんだろうなあ。

けどそれでも今は、紫苑君を堪能していいよね♡



END  

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