悪女の汚名返上いたします!~悪役聖女として追放されたのに、私を嫌っていたはずの騎士がなぜか甘々に…⁉~
(ピンチこそ最大のチャンスよ)
 
 絶望的な状況においても、生きるため、そして復讐を果たすために、ベアトリスは最善を尽くす決意をした。


 ✻  ✻  ✻
 

(盗まれたのは、消毒液、傷薬、他には……)
 
 唯一の手がかりは、閲覧が許された盗難品の一覧表(リスト)のみ。

(正直、ヒントが少なすぎるわ。協力者もいないし。……いいえ、始める前から諦めちゃダメよね。ひとりでもやってみせる! まずは救護室に来る人間を観察して、警戒するところから始めましょう)

 看守から犯人逮捕を命じられてからというもの、ベアトリスは毎日、怪しい人物がいないか目を光らせた。
 囚人だけでなく、交代で外部から治療にやってくる医師や看護師も警戒して見ているが、今のことろ不審者は発見できていない。

(私ひとりで全員を監視するのは、やっぱり無理なのかしら)

 思うように成果が上げられず焦りはじめた頃──。
 
 その日は、早朝からやけに多くの怪我人が救護室に運ばれてきていた。

「なにか事故でもあったの?」
 
「ああ、ほらさっき小さな地震があっただろう? あれのせいで、第二鉱山で落盤事故があったのさ」
 
「だから今日は怪我人が多いのね。でも死者が出なくて、本当に良かったわ」

 ベアトリスは治療と雑談をしながら、自然に周囲の様子を窺った。

(私が犯人なら、こういう混雑した時を狙って盗みを働くと思うわ)

 患者と会話をしながら、それとなく辺りを見ていると、視界の端に不審な動きをする男を捉えた。
< 17 / 231 >

この作品をシェア

pagetop