【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!
 セレーナはベッドの上で札束を抱きしめて泣いた。
 悲しいんじゃない、悔しいのだ。

 あの男の明らかに見下したような視線、うんざりしたような話し方、なにもかもが腹立たしい。
 
(貴族はみんなそうだ。どいつもこいつも、あたしのことを馬鹿にしやがって!)

 ──全部……ぶち壊してやる!
 
 退院後、セレーナは逆恨みのような復讐心に突き動かされるまま、バレリー伯爵家の屋敷前で、声高らかに叫んだ。

『わたしは……バレリー伯爵の、娘です……!』

 時に屋敷前で、時に街のど真ん中で、あちこちで自分はバレリー伯爵の庶子だと言いふらした。

 バレリー伯爵家が強権的な貴族であれば、邪魔なセレーナは口封じのため殺されていただろう。
 
 しかし、伯爵は良く言えば温和で善良、悪く言えばお人好しだ。

 これ以上、野放しにして悪評を立てられてはたまらないという理由で、一旦事態の収拾を図るため、セレーナは屋敷に使用人として招き入れられた。
 
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