エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす

 馬鹿みたい、と心の中でつぶやく。

 私の人生に北斗を関わらせないと決めたのは、ほかでもない私自身だ。

 今もなお胸を疼かせる彼の思い出を振り切るように、手早く化粧を終える。

 ふんわりとしたパーマがかかったベージュブラウンの髪も手櫛で整えた。

「よし」

 なんにせよ、過去の感傷に浸っている場合ではない。

 いつもと違う厳戒態勢や、絶対に失敗できない状況で、ほかのことを考えている暇はないのだから。

 化粧ポーチを手に、急いで戦場へ戻った。



 レセプションが始まり、ホールは一気に賑やかになった。

 日本のPRが行われ、会場のあちこちから様々な言語が聞こえてくる。

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