エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 英語くらいならばなんとか聞き取れるけれど、それ以外は何語なのかすらわからない。

 北斗なら違ったんだろうな、と思う。

 マルチリンガルの彼は海外と日本を行き来する外交官だ。

 母国語の日本語はもちろん、英語と中国語、ほかにフランス語とイタリア語も日常会話レベルで扱える。

 五年前にドイツ語を勉強していると言っていたから、今はもっと増えたかもしれない。

『育った場所によって、文化も考え方も違うのがおもしろいんだよな』

 そう語る北斗の微笑みを思い出してしまい、胸がちくりと痛む。

 あと一歩で結婚するところだった婚約者。

 ふたりの未来をずたずたに引き裂いたのは私だ。

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